今週のお題「寿司」
『日本人でよかった』としみじみ思えるのは寿司を味わっている時でしょうか
私は しめ鯖といなり寿司をシメに食べることをルーティンから外せません
好きな寿司ネタは昔からある王道なものがいいですね
★先人のすごい発明
昔からある寿司と言えば寿司の元祖といわれる「なれずし」があります
魚を白飯と一緒に何ヶ月も発酵させてつくる長期保存可能な
食品です
スゴイのになると【30年もの】なんてのもあるようで
そこまで行くとすでに固形ではなくスープ状になるようです
先人たちの偉大な発明ですね
しかし発酵してますから 強烈な臭いと酸味で食べる人を選ぶ食べ物
ではあります
それもあって「馴れずし」や「熟れずし」と書かれたりするんでしょうね
★ 若いうちは軽いノリで
初めて食べたのは35年程前です
確かゴールデンウィークでとても暇を持て余している時でした
友人が旅行雑誌で見つけて
「すっごく臭くて不味い寿司があるらしいぞ!食べに行こう!」
と軽いノリで言い出しまして
それを聞いた相手(私)も
「へーどんだけ不味いんだろ おもしろそう行ってみよう!」
と単純というのか暇人というのか
まぁよく言う若気の至りというヤツですね
この若い兄ちゃん二人はちょいとへそ曲がりのため和歌山に向かうことに
和歌山では秋刀魚や鮎等の「なれずし」があるとの情報も雑誌に書かれていた
事と不味すぎて食べられなかった時の保険として「めはり寿司」も食べる計画を
していたためです
「めはり寿司」にしてもこの時点ではどんな寿司なのか全く予備知識は皆無でした
現在のようにスマホで簡単に大量の情報が得られる世の中ではなかったので
そんな「不確か」を許せて楽しめる時代の良さではありますよね
★ 和歌山へGO !
さっそく翌日早朝 和歌山に出発
排気量550ccの狭苦しい軽自動車に男二人で乗り込みます
途中狭い車内で大きい地図を広げて道を確認しつつ迷いながらの旅
そして数時間かかりようやく目的のお寿司屋さんに到着
ろくに休憩もせずに運転しましたからもうクタクタです…若いねぇ
和歌山のどのお店だったかは覚えていませんが地元で長年続いている
といった風情で店に入るといかにも寿司職人といった大将と若い弟子が二人
いるような「まちがいない!」といった店でした
店に入っていきなり「なれずし」を注文すると大将が
「兄ちゃんたちどこから来たんだい?」としゃがれた声で話かれられました
「愛知県から来ました 雑誌にこの店が載ってたんで来たんです」
と雑誌を掲げながら答えたら「よく来なすった!」と とても喜んでもらえて
注文したものが出てくる前に小鉢に煮物など数種類サービスしてくれました
★ファーストコンタクト
ほどなく「なれずし」が運ばれてきました
目の前に置かれたとたん ものすごい悪臭がまとわりついて
ストレートに表現すれば腐敗した魚の匂いです
発酵食品だという情報は無かったのでドン引きです
友人と二人 悪臭にしかめっ面で向き合っていましたが
言い出しっぺの友人が意を決して先にひと口
途端に「ウッ」と声が漏れる
目の前でそんな反応されたら後発の私の心模様 理解していただけるでしょうか?
無口になった友人の手前 ここまで来て敵前逃亡はできません
ここに来るまでの道のりを回想しながら強烈な悪臭の物体を口に運びます
そしてひと口 「ウッ」なんて酸っぱい味でしょう
そして鼻を抜けていく魚の腐敗臭
口の中にあるものを牛のごとく反芻し
頭の中で飲み込むための妥協点を必死で探します
「ここでお茶を飲んで胃に流し込んだらこちらの負けでだ」
「そんなことをしたら二口目がいけない気がする」
あれこれ考えを巡らしていると妥協点が現れました
❝うまみ❞を見つけました そして何とか飲み込むことができました
攻略の糸口を見つけた私ですが 友人は妥協点が見つからず苦笑いしています
そして一言「いや~俺これダメだわ お前にやるよ全部」
目の前にはほぼ減った気配のない「なれずし」が二皿
臭いが目に沁みます…ウゲェ~
結局 親切にしてくれた店の大将の手前残すわけにはいきません
わずかな妥協点を頼りに私一人 ひたすら突き進み
途中味と臭いに麻痺してきたところで
一気に畳みかけて無事完食しました
長い戦いでした
そんなアホなお兄ちゃん二人を見ていた大将が❝さもあらん❞とばかりに
「はじめてにしてはよく食べたの~口直しにこれ食べていきな」と
しめ鯖といなり寿司をいただきました
大将 なんていい人なんだろう
感謝で胸いっぱいでした
でもこの「なれずし」ですが 私が悪戦苦闘していた間にも
地元の人がお持ち帰りで10人程はいらっしゃったのです
大将曰く「これ好きな人は毎日買いに来るね チーズみたいな味がしてうまいんだよ
前は近所に住んでた外人さんがよく買いに来てたなぁ」と話してくれました
地元の人にはとても愛されている寿司なんですね
それでほぼ食べられなかった友人は保険に掛けてあった「めはり寿司」を求めて
30分程離れたところにあるお持ち帰り専門のお店に速攻で移動
お腹空いてますもんね
二人分を買って近くの公園の駐車場でやれやれという感じでガブリと食べたのですが
「めはり寿司」って高菜の漬物でおにぎりを包み込んだだけのものだったんですね
そんなこと雑誌には書かれていませんから「全然寿司じゃないじゃん!」と
二人で驚いたことも今でも覚えています
「なれずし」また食べたいな~とは思いません…お好きな方…すいません
最後までお読みいただきありがとうございます
少しだけ笑っていただけたら幸いです